Dear Daily Delusions

Dear Daily Delusions (2021.12.31)
Music & Lyrics by Café Rainbird

Daydream Circus

ごきげんよう こんにちは
満員電車に揺られては
眺める窓の外 いつもの暗い街並み

死ぬほどに億劫な
手帳を埋める予定たち
全部を真っ黒に
塗り潰してしまいたい

目を背けて 耳塞いで
どうしようもない現実すべて
綺麗な夢に変えて
鳥のように 煙のように
この日々から 逃げてしまえたらいい

ーー指を鳴らせば
はじまるよ ほら サーカスが
めくるめく素敵な白昼夢
頭の中 華やかな舞台
空中揺れる ブランコ

繰り返す ほら 何度でも
素晴らしくクールな綱渡り
かびくさい日々を飛び出すよ
奇跡のような軽業芸で

ごきげんよう さようなら
ふらつく夜の帰り路
あふれる人混みに 溺れそうに歩いて

吐くほどにうんざりな
飛び交う怒号 大騒ぎ
全部にふたをして
埋めてしまいたいほど

目を背けて 耳塞いで
煩わしい現実すべて
楽しい夢に変えて
嘘のように 手品のように 
この世界を 消してしまえたらいい

ーー指を鳴らせば
動き出す ほら サーカスが
どこまでも愉快な白昼夢
動物たち燃える輪をくぐって
可愛いダンス踊って

繰り返す ほら 何度でも
素晴らしく見事な幻術
憂鬱な日々を消し去るよ
世にも不思議な大魔術で

目を背けて 耳塞いで
救いのない現実すべて
戸棚の裏に捨てて
何も望まず ピエロのように
口を噤んで 微笑んでいればいい

ーー指を鳴らせば
あらわれる ほらサーカスが
あふれだす優雅な白昼夢
ジャグリングする心象の洪水
壊れた日々の幻想

繰り返すほら何度でも
素晴らしく華麗な脱出劇
つまらない日々を抜け出して
自由に満ちた夢の彼方へ

エレクトリック・ファントム・ショウ

暗い箱の電気つければ
始まるよ 気まぐれな見世物
電子の闇 縫ってうごめく
亡霊たちの愉快な遊戯

指を鳴らし ふいに始まる
奇術師のびっくり手品
嘘とまこと うまくすりかえ
あっと言わせる 言葉巧みに

歌う 歌う 亡霊たち
蜘蛛の網の影に潜り
歌い出すよ 望めばほら
今日の福音を

ネジの切れた玩具たちが
割れた楽器かき鳴らして
どこにもない天国の歌
壊れるほど何度も歌う

他愛のない残酷劇に
腐るほど甘い叙情劇
陳腐な素材 うまく仕上げる
熟練料理人の見事な手管

笑う 笑う 亡霊たち
蜘蛛の網の底に潜み
暴き出すよ あられもなく
暗い欲望を

疲れ切った道化たちが
脆い情緒放り捨てて
楽しいジグ踊りながら
燃えさかった鍋に飛び込む

ほらごらん そこの坊や
ここへおいで 早く、早く!
魅力的なすごい演し物に
変えてあげるからーー

闇の底を覗けばほら
心躍る素敵な見世物
油断すれば引き込まれて
電子の闇に溶けて消える

飽き足りない亡霊たち
日がな夜がな 贄に飢えて
終わりのない百鬼夜行
今日も次の犠牲を探す

Sweet Blood

運命の夜 時は満ちて
晩餐の支度は 念入りに済ませて
来客の呼び鈴 待ち遠しくて
湧き上がる期待に そっと耳をそばだてて

歓迎の抱擁 今は軽く
食前の口づけは 控えめにやさしく
蝋燭の灯は照らす 淡く
宵闇をまとった細い指を 美しく

  ※ ※ ※

こぼれる生命 葡萄酒の雫
味わうほどに 熱く甘く
蕩けるような至福のあとで
寂しくなるのはどうしてなのかしら?

エナミィ・クイーン

戦乱焼け付く大地にひらめく旗印
畏れよ 聞こゆるその名は混沌

孤高の女王に従う機械の軍勢が
等しく現世にもたらす混乱

凶風吹きしく闇夜にきらめく槍衾
懼れよ 轟くその名は終焉

不毛の荒野に広がる数多の残骸を
踏み越え見渡す瞳は深淵

移ろう生命に駆られる者よ
絶息以外の何を望むか?

冷たき女王の坐す玉座はいと高く
示すは血汐に染まりし称号

気高く軍を指揮する 優美な口元に
幽かに滲むは破滅の衝動

≪ああ我が平穏よ!≫
真に得難き心の平和よ
地獄の業火で灼かれる苦痛と
汚辱に塗れた呪いの彼方に
僅かに一時そなたを得るまで
私は世界の全てを敵に
在らん限り 憎しみ 戦い 破壊し 
滅ぼし続けるだろう

無限の憎悪と怒りの果てに
剣がこの胸貫く そのとき
彼の者 遍く引き継ぐだろう
滅びの望みに満ちた力を

ラジオハート・ベイビィ

胸はムカムカ いつもイライラ
キケンウンテン ひたすらフキゲン
あらら大変 気をつけないと
悪い電波を拾ってしま×△○□

(なんだか あたまが)
(タノシクなってきちゃった)
(ほら 聞こえるでしょ?)
(メッセージ 星雲の果てから届くの)

キミも聞いてたでしょ?
全部わかったでしょ?
ボクら最近ずっと調子ワルイ原因
だからふたりで
ぜんぶ世の中ピカピカにしなくちゃね?

脳天から かわいい花が咲く
キミもボクも おそろいの色
視界を舞うネオンの花吹雪
キミもボクも みんな 埋まってしまうよ

頭痛ズキズキ からだガタガタ
ドウロコウツウ ひたすらユウウツ
あらら危ない 気をつけないと 
悪いノイズで頭が割れ×△○□

(なんだか あたまが)
(スッキリしてきちゃった)
(ほら 見えるでしょ?)
(シグナル あのビルの窓から届くの)

キミも見てたでしょ?
全部わかったでしょ?
ボクら最近ずっと頭イタイ原因
だからふたりで
ぜんぶ地上をマッサラにしなくちゃね?

脳髄から飛び出るエレキテル
キミもボクも 熱に浮かれて
絶頂まで高まる周波数
キミもボクも みんな 壊れてしまうよ

(improvization)
”……機械仕掛けの高層ビル群
晴れのち曇りで月が隠れたら
ところによっては世界の終わりが
強い風とともに訪れるでしょう
次のニュースは連続爆弾事件の続報
爆破の予告は犯行声明明日の明後日
都内各所で開花の予報です
危険ですので当日には
不要な夜間の外出は控えてください
なお本日この件について
当局は現場で目的された少年と見られる男女二人を
何らかの事情を知っていると見て
現在行方を追っているそうです”

あたまのなか 壊れたアンテナが
拾うよミュージック ロマンスカヨウ
キミとボクの とろける逃避行
さあはじめよう あーゆーれでぃ?

眩暈のする電波の洪水の
波に乗って 遠く遠くへ
薄汚れたジャンクな毎日に
キミもボクも みんな サヨナラサヨナラ

反世界の恋人

宝石のような瞳に
天使のような顔立ち
誰しも心惹かれる
私の架空の恋人

flow, flow…
虚空を想う この想いは
flow, flow…
この身をやがて焦がして

やすらぎを知らず 幸せを知らず
光さえ届かない奈落の底で
つかの間も得られない自由の夢を
偽りの夢を ひとり夢見る

投げかける声やさしく
微笑む顔はおだやか
夜毎に愛をささやく
私の不在の恋人

flow, flow…
虚空に願うこの願いは
flow, flow…
命をやがて燃やして

喜びを知らず ときめきを知らず
響きすら聞こえない孤独の淵で
どこまでも届かない恋の想いを
偽物の恋を ひとり恋する

連れ出して今すぐに 灼けつくような熱量で
窮屈なこの身体 燃やし尽くして さあーー

愛を知らず 運命を知らず
少しずつ崩れていくこの世の果てで
私には届かない世界のことを
恋人のことを今日も想って

影絵の国でつかまえて

小さな路地をいくつか通り抜け
着いたのは見覚えない景色
道行く人は誰も顔が見えず
実体のない影絵のようで

路地の迷路さまよっても
どうしてか元の場所に戻れはしないで
帰りつく道を探し続けても
どこにもひとつも見つからなくて

迷い込んだここは影絵の国
闇と光入り混じってまだらになる
物を言わぬ影法師の群れに
まぎれて日々をやり過ごして

見知らぬ路地をどれだけ歩いても
いつだって見覚えないままで
会う人々は皆ぎこちなくて
壁に映った影絵のようで

道のパズル解こうとして
どうしてか謎はもっともつれるばかりで
終わりない夢にずっと囚われて
いまだにどこにも行けないままで

出口のないここは影の世界
顔も名前も忘れて闇に溶ける
誰でもない影になってずっと
無限の日々をただ過ごして

無限の日々をただ過ごして

冬のマーメイド

暗い部屋の片隅にたたずみ
長い夜が戸をたたくのを待つ

つかのまのまどろみに目を閉じても
たぶん 本当のやすらぎは見つからない

真夜中のしずけさは 物憂げにささやく
いつしか忘れた子守歌
懐かしい深海の穏やかなメロディに
耳を澄まして今夜も更けゆく

白い息を吐きながら眺める
窓の外は灰色に染まって

冷え切ったこの身体暖めても
たぶん 凍てついた心は戻りはしない

白昼のざわめきは 哀しげにささやく
いつしか潰えた冬の夢
耐え難く鳴り響くひび割れた不協和に
耳をふさいで今日も過ぎていく

迷い込んだかりそめの世界は
声の出ない私を拒絶して

ひとつだけ願いがかなうとしても
たぶん 泡のように消えるのを望むだけ

うたかたの毎日はひたすらに虚しく
呼吸もできずに乾いていく
ひとときの安息を求めても
この地上に居場所なんてどこにもないのに

落ちていくゆっくりと 意識の暗黒に
夢さえも届かない場所へ
真夜中の静寂はやさしげに誘う 
深い海の底 私の故郷に

Frost World Hypothesis

月が照らすのは 凍りついた街
うらさびた墓標の群れのよう
二度と動かない 昨日までの世界
むなしく面影を残すだけで

冷たい輝き 月の光が温度奪う
眠ったまま 綺麗なまま 熱が消えるまで

争いもなく 憎しみもなく
冷えきって時は停まる
終局もなく ずっと動かないまま
ただ つかのまの永遠が終わるまで

晴れ渡る夜空 浄められた夜
蒼白い孤独な月の下
かすかな吐息も すぐに凍りついて
きらきらときらめく星のようで

無限の静寂 星は無言の歌を歌う
まどろむまま 静かなまま 息の止まるまで

苦しみもなく 哀しみもなく
凍てついて時は停まる
感情もなく ずっと息止めたまま
ただ 長すぎる一瞬が過ぎるまで

凍ったまま 動けぬまま 
長い滅びの時間の中で
待つ以外何もできずに
ただうつろなまま 過ぎた日の夢見る

phi phenomenon

まわるまわるまわるまわる――
映写機のリール 音立てて かたかたと

まわるまわるまわるまわる――
フィルムの静止画 なめらかに動き出して

まわるまわるまわるまわる――
まばゆい視界 パノラマでくるくると

まわるまわるまわるまわる――
綺麗な映像 めくるめく季節 色鮮やか

移りゆく心象は
薄れていく ほら 何回繰り返しても
知らない異国の 知らない時代の
知らない風景のよう

輝く景色が明瞭に見えても
壊れた心が闇に映し出す影
無限の時間が流れて過ぎても
停まった心は今もずっと動かないまま

まわるまわるまわるまわる――
多彩な情景 足早に次々と

まわるまわるまわるまわる――
見知らぬ記憶 なにもかもただ他人事のよう

つぎはぎの想い出は
風化する ほら 何回思い出しても
知らないどこかの 知らない誰かの
知らない人生のよう

素敵な物語が現実に見えても
壊れた心に映る見せかけの影
無数の場面が浮かんで消えても
うつろな心は今もずっと動かないまま

燃える燃える燃える燃える――
廃墟の世界 音立ててぱちぱちと

燃える燃える燃える燃える――
偽物と本物 なにもかも ほら 煙になって

感情も想い出も
燃え尽きて ほら 等しく灰に変わって
苦しい気持ちも せつない痛みも
なにも感じないまま

眼にするすべてが確かに見えても
狂った世界が見ている虚構の夢
生命の炎が燃え尽きかけても
むなしい心は今もずっと変わらないまま

映画の結末をとっくに過ぎても
出口の見えない壊れた劇場に今も置き去りのままで
心の残骸かすれて消えても
知らない誰かの見ている夢を繰り返すだけ

空虚で寂しい夢にずっととらわれて――

愛しき灰の都

大地焼け焦げ 草木枯れ果て
昨日も明日も 人影はなく
吹き抜けていく 乾いた風に
灰の舞い散る 瓦礫の都

月日幾年 過ごし行くとも
変わらぬながめ 変わらぬ景色
時計の砂の 降り積むままに
灰に埋もれる 終の都よ

心うつろい 想いは薄れる
終わりない時間の旅の果てに
街はまどろむ 時空の彼方で
燃え尽きた滅びの世界で

帰らぬ日々を 想ってみても
今はむなしく 過去はぼやけて 
無限の果ての 安堵の瞬間を
夢見てやまぬ 永遠の都よ

心擦り切れ 想いは消え去る
永久の時間が過ぎたあとで
街は滅びる 時間の彼方で
過ぎ去った記憶を忘れて

交差点の天使

アスファルトの道路 ひらけた道を
せわしなく行きかう 物憂げな人々
鈍色の雑踏 誰しもみんな足早に
消え去りたいみたいに通り過ぎていくだけで

絶え間ないざわめき 寄せてはかえし
ありふれた日常 つまらない毎日
無限に続いていく 退屈な日々のひとつが
今日もまた過ぎていく そう思っていたんだーー

だけれどそのとき
うつむくまま歩く僕の前に
静かに奇跡が舞い降りてきたんだ

高い空の果てから翼広げて
白い羽根の天使が降りてきたんだ

人々は変わらず 道を過ぎ行き
誰ひとり天使に気づかないみたいで
僕だけがその場で 絵画のような光景の
交差点の天使に心奪われていた

いつもと同じの
ごく普通のなんでもない場所に
空からまばゆい光差していたんだ

交差点で天使は翼休めて
透き通った瞳で空を見ていた

ひどく味気のない 無機質な僕の日々に
その日小さな感動の光が差した
他人事のような 灰色の世界が
ふいに色づいて 見えたんだ――

いつのまにか天使は姿を消して
なんでもない日常が後に残った
見ていたものすべてが夢の気がした
だけど胸の鼓動は高鳴っていた


Music & Lyrics by Café Rainbird